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談合の対象になった工事の年間総額は二兆円に達すると推定された。
この「建設同友会」は大手建設会社二十二社の会長や社長をメンバーとする常設組織で、当時の会長は植良祐政飛島建設会長だった朝日新聞とのインタビューで、植良と前田はこうした業界の調整役だったことを率直に認めた(一九八一年十二月十五日付け)。
このインタビューがさらに衝撃的だったのは、前田が下水道工事を例に挙げて「地元の市長とか県の有力者、議員などから、この業者を使ってくれ、いやあの業者に、という声がいくつもかかり、役所では調整がつかない」「役所側がわれわれに調整を頼んでくる、と言ってもよい。
役所は先生方(政治家)に弱いですから」と語り、「談合はありえない」と繰り返してきた建設省や市町村の主張をこっぱみじんにしたことだ。
建設省、その出先機関、関係公団などから民間に天下るさいには一定の金額の公共事業を手土産にするのが慣例になっていることも明らかにされた。
当時報道されたある試算によると、こうして天下った役人の数は、全国で係長以上でも数千人にのぼっていた。
この談合疑惑のさなかに、会計検査院が爆弾をほうり込んだ。
一九八一年十一月二十日、一九七七年度から一九八一年度の公共工事のサンプル調査だけで、役所側の積算見積りの過大部分は百億円に達すると公表したのだ。
この発表は役所側が積算する予定価格には、建設業界に過大な利益を保証する仕組みが組み込まれているという印象をあたえ、巨額の税金が本来とは違った目的に使われていることをうかがわせた。
こうした仕組みが自治体から国政レベルにいたる選挙で、常に巨額のカネが建設業界から動く背景を説明しているというのが一般の受け取りかただった。
この談合疑惑が浮き彫りにしたのは、まさにこの国最大の政官財の癒着構造だった。
あらゆるレベルの公共工事をめぐり建設業者の背後に政治家がついて役所から工事の情報をとり、入札をめぐって役所に圧力をかける。
役所にはこうした圧力の調整が難しく、業者も過当競争を避けたい。
そこに業界団体や政治家の調整による談合がはいりこんでくる。
業界団体には上納金がはいり、その一部は政治献金になる。
政治家には落札された工事にたいする「謝礼」として業者から直接はいる献金もある。
中央政界における自民党にたいする政治献金では、当時、建設業界は鉄鋼、都市銀行を追い抜いてトップの座にすわっていた。
そのほか、大手を先頭に全国の建設会社は、自民党の派閥や中央、地方の政治家に多額の献金をしていた。
こうした献金の額は政治資金規正法で表面にでたカネだけで、水面下で動く業界のカネのほうがはるかに巨額なことは公然の秘密だった。
毎年、国税庁が発表する企業の使途不明金や交際費は、常に建設業界が群をぬいて一位である。
集票マシーン政治家が建設業者の面倒をみるのはカネのためばかりではない。
わが国最大の産業である建設・土木業界。
全国津々浦々に業者がいて、選挙ともなれば強力な集票マシーンになる。
実際、地方であればあるほど、過疎地であればあるほど、地域社会の公共事業にたいする依存度は大きくなり、建設業者の影響力は大きくなる。
自治体の議会の実力者は建設業者自身というのはふつうのことになっている。
地方自治体の首長や議会の選挙が、公共事業の配分をめぐる建設業者の主導権争いである場合も少なくない。
この談合疑惑が表面化したあと、日本土木工業協会は業界全体の政治献金をとりまとめることはやめると宣言し、談合の裏組織を解散した。
公正取引委員会も一九八二年八月六日に「入札談合はもっとも違法性の強いカルテルであり、個々の事業者の創意工夫や企業努力を損なう恐れが強い」として、談合は独占禁止法に違反する、との見解を発表した。
自民党がすぐこの見解に水をかけた。
同党の「建設業等契約問題に関する小委員会」(玉置和郎小委員長)は同月十九日、世論が要求していた一般競争入札制度の採用を退け、役所が指名する業者間でおこなわれる従来の入札方式を基本にすべきで、また指名業者間で受注業者をしぼる調整は独禁法のいう競争の制限にあたらない、との案をまとめた。
公正取引委員会の変身案の定というべきか、公正取引委員会(高橋元委員長)は一九八四年二月二十日、公共事業の入札をめぐる談合を断罪した見解を大幅に修正した指針を発表した。
指針は、建設業者が官公庁の計画している工事や、それぞれの業者が受注を希望する発注予定工事について情報を交換することを認めていた。
また、計画工事に必要な技術力や工事現場についての情報交換や、さらに共同受注の場合は参加希望の企業の組み合わせについて意見を交換することまで認めた。
指針は、話し合いで受注予定者や落札価格まで決めるのは違法だとしていたが、広範囲にわたる事前の情報交換を認めたことでかえって受注調整がやりやすくなったという見方まででた。
実際、談合疑惑で世論の批判をあびた建設業界は、建設業を独占禁止法の適用除外にして、談玉置は有力な建設族のひとりで、この案は自民党の建設部会が了承し、談合をめぐる同党の最初の公式見解になった。
この見解は談合が法に触れる場合は関係法令を改正し、適用除外にするべきだとも述べて、談合を弁護し、あらためて自民党と建設業界の癒着ぶりをみせつけた。
建設省も公正取引委員会の見解を無視し、自民党の見解を尊重する姿勢をあからさまに示していた。
合そのものの合法化をもくろみ、自民党見解もそれに沿うものだった。
ほかの業界とのバランスから、無理だと判明すると、情報交換の範囲をできるだけ広く認めさせるよう戦術を転換した。
公正取引委員会の指針をめぐる交渉は同委員会と建設省との間でおこなわれた。
委員会は業者間の情報交換の範囲をできるだけ狭めようとし、建設省は建設業界と二人三脚でその範囲をできるだけ拡大しようとして、交渉は衝突をくりかえした。
ここに登場したのが金丸信、玉置和郎らの自民党建設族で、陰に陽に建設省を応援するとともに、公正取引委員会には「範囲を広げなければ、建設業を適用除外にする独占禁止法の改正を議員立法で強行する」と圧力をかけた。
独占禁止法の部分的とはいえ骨抜きをおそれた公正取引委員会は、こうした圧力に屈して、建設業界が期待していた以上の譲歩をおこない、情報交換という名の談合が公然とおこなわれる道をひらいたのだった。
裏付けるように、談合の中央組織はその後、自民党建設族の後押しで復活し、大型の公共工事の受注の割り振りを続けていた。
明らかになったのは、新たな談合中央組織だった「経営懇話会」(会長、清山信二鹿島建設副社長、大手三十二社参加)が一九九○年七月一日に解散を表明したからだ。
つまり、解散宣言でその存在が明らかになったわけだ。
「星友会」事件残念ながら、この解散という儀式は、業界はもちろん、国内からの浄化ではなく、米国からの外圧があったからである。
米国は長年、談合が米国建設業の日本へ進出するさいの大きな障害になっているという主張を続けていた。
まったく改善の兆しさえ見えないため、一九八八年に実力行使に踏み切ったのである。
日本人の情報提供者をつくり、横須賀基地における米軍発注の工事をめぐる談合に関連して、収集した具体的で膨大なデータを日本側に渡した。
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